「2021 年度 GPIF ポートフォリオの
気候変動リスク・機会分析」を刊⾏しました
2022年9⽉30⽇
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2018 年に「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)への賛同を表明して以降、TCFD の提言に基づいた情報開示を行っています。この度、TCFD 提言に基づく分析結果を国民の皆様にご報告するため、「ESG 活動報告」の別冊として3冊目となる「2021 年度 GPIF ポートフォリオの気候変動リスク・機会分析」を刊行しました。
今年度は、株式、社債、国債について、「同じ前提条件に基づいて分析する」ということを重視しました。世界の主要中央銀行や金融当局によるネットワークである「気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)」が2021年6月に公表した気候シナリオに基づき、ポートフォリオの気候変動リスク・収益機会について、分析しました。そのほか、カーボンニュートラルの政策動向や企業の脱炭素目標の設定状況について分析を行いました。
<本レポートの構成>
序章 本稿の問題意識とポイント
第1章 カーボンフットプリント等の測定
第2章 カーボンニュートラル実現に向けた官民の動向分析
第3章 気候バリューアットリスクによる分析
第4章 その他の分析
なお、今回は MSCI 社、FTSE Russell社、ブルームバーグNEF社に委託し、各社の協⼒の下、分析を行いました。
<宮園理事⻑コメント>
気候変動リスクについては、全ての資産クラス・銘柄に同時に生じるものであり、分散投資を行うことでは完全に消すことができず、時間とともに今後さらに深刻化する可能性が高いリスクであると考えられています。GPIF ではこのような問題意識の下、今年もポートフォリオを対象とした気候変動リスク・機会の分析を行いました。
国内の上場企業のみならず、海外の主要企業に幅広く投資を行うGPIFにとって、世界の国々や企業が気候変動に関連して、どのような課題やリスクを抱えているのかについて把握することは大切です。今回の分析では、世界のGDPの99%を占める国々が既にカーボンニュートラル実現に向けて舵を切っており、脱炭素技術への投資が今後拡大する見通しが示されています。また、厳しい気候変動政策下で、日本企業の低炭素技術への評価が高まり、企業価値にもプラスに働くことが示されています。
数十年先までの気候変動やそれに伴うリスクや機会を正確にとらえることは、現実には極めて困難であり、分析結果についてはかなり幅をもって解釈する必要がありますが、投資家のみならず、事業会社の方々にも、気候変動に伴うリスクと機会を考える上での⼀助となれば幸いです。