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2024/25年 スチュワードシップ活動報告

2025年3月31日

GPIFは、「2024/25年 スチュワードシップ活動報告」を以下の通り公表いたしました。

本活動報告では、スチュワードシップ責任を果たすための方針に記載の通り、第1章で「GPIFの取組」について、第2章で「運用受託機関の取組と課題」についてご報告します。第3章では、前2章及び本日同時に公表している「GPIFのスチュワードシップ活動の方向性と当面の取組み」を踏まえ、「運用受託機関への期待と課題・GPIFの今後の対応」をまとめています。

GPIFは、長期的な投資収益の拡大を図る観点から、投資先及び市場全体の長期志向と持続的成長を促す様々な活動を進め、スチュワードシップ責任を果たしていきます。

「スチュワードシップ活動報告」概要

<GPIFの取組>

GPIFの取組における、この一年間の新たな取組のうち、主なものは以下の通りです。

  • 企業インタビュー
  • 経団連・GPIF アセットオーナーラウンドテーブルの創設及び開催
  • エンゲージメントの効果検証

<GPIFの運用受託機関のスチュワードシップ活動の状況>

(1)国内株式運用受託機関による日本株のエンゲージメント状況

 2024年1月~12月の一年間で、国内株式運用受託機関は、2024年3月末時点で保有している国内企業数2,252社の45%にあたる1,011社と対話を行っています。時価総額ベースでは96%に相当します。また、対話件数は8,718件であり、その76%にあたる6,583件がパッシブ機関(*)による対話です。規模別では、TOPIX500構成企業では、96%にあたる477社の企業とエンゲージメントを行っています。
エンゲージメントのテーマとして、本年は、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けたエンゲージメントの状況についても確認しました。2023年3月に東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を公表し、企業に対して、経営層が主体となって、現状分析、改善に向けた計画策定、開示、取組の実行を要請しました。全ての国内株式運用受託機関で、東証のこの要請に関連したテーマでエンゲージメントを行っており、東証の要請以降、多くの運用機関が当該テーマの活動を強化していることが確認できました。
(*)パッシブとアクティブ両方受託している場合はGPIFの委託の多いマンデートでカウント。


(2)エンゲージメント強化型パッシブ4社のエンゲージメント進捗状況

 GPIFの株式運用のうち約9割がパッシブ運用であり、上場企業に幅広く投資を行っていることから、市場全体の長期的な成長がリターン向上に欠かせません。パッシブ運用については投資先企業の長期的な企業価値の向上や特に市場全体の持続的成長を促すためのエンゲージメント活動に取り組むことが重要と考えています。GPIFでは、スチュワードシップ活動を通じた市場全体の持続的成長とスチュワードシップ活動のアプローチ方法の多様化・強化を目的として、スチュワードシップを重視したパッシブ運用である「エンゲージメント強化型パッシブ」ファンドとして、2018年にアセットマネジメントOne、フィデリティ投信の2社を採用し、2021年に、三井住友トラスト・アセットマネジメント及びりそなアセットマネジメントの2社を追加採用しました。4社とも、エンゲージメントは順調に進んでおり、ここ一年間は、経営の本質に関わるような重要なテーマでのエンゲージメントも増加しています。


(3)重大なESG課題

 GPIFは、スチュワードシップ活動原則で、重大なESG課題について積極的なエンゲージメントを求めています。内外株式パッシブ運用機関においては、全運用受託機関が、「気候変動」、「ダイバーシティ」、「情報開示」を重大な課題として5年連続で挙げています。一方、アクティブ運用機関は、国内株式と外国株式で認識している重大なESG課題が分かれています。国内株式では、「気候変動」を全機関が3年連続で挙げています。

<運用受託機関への期待と課題>

 GPIFは、2025年3月31日に、第5期中期目標期間(2025年4月~2030年3月)の開始に当たり、「GPIFのスチュワードシップ活動の方向性と当面の取組み」を策定し公表しました。これまで同様、「長期的な企業価値向上」「資本市場や経済全体の持続的成長」を重視した取組みを中心として、第5期中期目標期間における重点事項は以下の通りです。
(1)GPIFでは、長期的な投資収益の拡大の観点から、持続的な企業価値向上につながる資本配分や事業戦略の促進などを重視。
(2)サステナビリティについては、気候変動によるリスク、地政学上のリスクなど、テーマ・地域・業種によって機会・リスクが様々で変化も大きいと考える。今後もフィナンシャルマテリアリティの観点から、企業による機会の追求、リスク低減(強靭性向上含む)、情報開示を運用受託機関等が促進することを重視。
(3)企業がサステナビリティに関するリスクや機会、環境変化に適切に対応しつつ、中長期的に企業価値を向上させるための礎としての実効的なコーポレート・ガバナンスを促進する取組みを重視。

 運用受託機関には引き続き、GPIFのスチュワードシップ活動原則、議決権行使原則を踏まえた対応及び従来から課題として挙げてきた事項に加え、以下3点への対応を特に期待しています。

  • 運用とスチュワードシップの融合
  • エンゲージメントの高度化
  • 投資先に対するメッセージと情報開示

昨年8月には、アセットオーナー・プリンシプルも策定され、スチュワードシップ活動の重要性やアセットオーナーへの期待がこれまで以上に高まっています。従来の取組を深化させるためには、これまで以上にアセットオーナーも投資先企業の企業価値向上に向けて、より投資先企業に対する理解が必要になると考えています。そのため、制度上認められた範囲内で、引き続き、エンゲージメントの実態把握を目的とした企業との対話を実施していく予定です。
また、エンゲージメントの高度化の観点では、エンゲージメント強化型パッシブの節でも触れているように、ここ一年間は、経営の本質に関わるような重要なテーマでのエンゲージメントも増加しています。テーマによってはより時間をかけて投資先企業とエンゲージメントを行っていく必要がありますが、そのためには、エスカレーション戦略をはじめとした長期的なエンゲージメント戦略、エンゲージメント実績データの整備やマイルストーン管理、効果検証もこれまで以上に重要になってくると考えます。
GPIFは引き続き、長期的な投資収益拡大の観点から、運用受託機関と企業の対話を促進することや、GPIF自身による投資先企業へのヒアリングやスチュワードシップ活動の効果検証等を通じて、企業や資本市場の持続的な成長・発展を促し、インベストメントチェーンの最適化を目指してまいります。

以上

For All Generations