「2019年度 ESG活動報告」を刊行しました
2020年8月19日
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、次世代も含めた被保険者の皆様の利益のため、長期的な観点から積立金を運用しています。国内外の様々な企業・発行体に幅広く投資するGPIFにとって、国民の皆様からお預かりした年金積立金を長期的に増やしていくためには、市場全体の持続的かつ安定的な成長が不可欠です。そのため、投資先企業のガバナンスの改善に加え、環境・社会問題などによる負の影響を小さくすること、つまり、投資におけるESG(環境・社会・ガバナンス)の考慮を通じ、ポートフォリオの長期的なリスク低減やリターンの向上を目指しています。
GPIFはこうした認識に基づきESGに関する取組みを積極的に行っていますが、その取組みと効果を国民の皆様にご報告するため、今年で3回目の発行となる「ESG活動報告」を刊行しました。昨年度開始した「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言を受けた分析について、今年はさらに分析対象を広げ、気候変動によるリスクと機会の資産横断的な評価にチャレンジしました。
GPIFでは、ESG活動が期待通りに金融市場の持続可能性やリスク調整後のリターンの向上につながっているのかを測定し、長期的な効果の検証につなげていきたいと考えています。
<「2019年度ESG活動報告」の主なコンテンツ>
【第一章】ESGに関する取組み
- ESG指数の選定とESG指数に基づく運用
- 株式・債券の委託運用におけるESG
- スチュワードシップ活動とESG推進
- 指数会社・ESG評価会社へのエンゲージメント
- オルタナティブ資産運用におけるESG
- 海外公的年金・各種団体との協働
- TCFDへの賛同と気候関連情報開示
- ESG活動の振り返りと今後について
【第二章】ESG活動の効果測定
- ESG指数のパフォーマンス
- ポートフォリオのESG評価
- ESG評価の国別ランキング
- ESG評価間の相関
- 女性の登用に関する日本企業の評価
- ポートフォリオの気候変動リスク
- Climate Value-at-Riskを用いたリスクと機会の分析
<宮園理事長コメント>
GPIFでは、年金積立金の持続可能性を高める上で、投資においてESGを考慮することが重要であるとの考えから、2015年の国連の責任投資原則(PRI)署名以降、ESGに関する様々な取り組みを進めて参りました。3冊目の刊行となる今回の報告書では、昨年度に続いてTCFD提言に沿った情報開示を行いました。今回初めて「物理的リスク」や「機会」についても分析しています。気候変動のリスクや機会を、金融資産として全く異なる性質を持つ株式と社債に整合的なかたちで反映するための新たな分析手法にも挑戦しています。この試みが、他のアセット・オーナーやアセットマネジャーの情報開示に関しても良い刺激となれば幸いです。